今までと同じポリシーで利用したいということで、Exchange Online で IP アドレス制限を掛けたいという話は良く聞きます。これまでは、AD FSを利用したクレームルールを構成するか、Azure AD Premiumの条件付きアクセスの機能を利用する、あるいはサードパーティのツールを利用するなどして制御するしかありませんでした。
いずれも新規でサーバを立てるなり、追加でライセンスを購入するということでコストの掛かるソリューションでしたが、Exchange Onlineに実装された(現在、まだ全てのテナントで利用可能ではありませんが)クライアントアクセスルールを利用する事により、標準機能としてこれを実装できるようになりました。
Exchange Online のクライアント アクセス規則
また、この機能は現在 AD FS などを利用してIPアドレス制限を掛けている環境においても、その不足する部分を補完する存在になり得ますので、是非この機能は注目して頂ければと思います。
Exchange Online では認証を自身で行わずに Azure Active Directory(Azure AD) で行っています。アクセス制御についてもAzure AD側で実施をしており、認証のタイミングでの条件でアクセストークンが発行されます。トークンのあるユーザーに対しては既定で Exchange Online は無条件でアクセスを受け入れますので、例え、クライアント側でその条件が途中で満たされなくなっても理論上アクセスは継続されます。
簡単なイメージですが、モバイル PC を WiFi で社内 LAN につないで Exchange Online に接続したとします。AD FS を利用して社内からしかアクセスできないように制限をしていたとしても、この PC をそのまま外に持ち出してWiFiをスマートフォンのテザリングなどに切り替えても、アクセスが継続可能です。
これを、クライアントアクセスルールを併用して社内 LAN からインターネットに出ていく際のグローバルIPアドレスのみ許可するような設定をしていた場合、WiFiを切り替えた瞬間に利用できなくなります。
今までは、こういったケースに関しては「社内PCを外に持ち出す」「外で利用するPCを社内LANに接続させる」など別次元のセキュリティリスクの話として片付けるしか無かったのですが、クライアントアクセスルールの併用でそういった穴を塞ぐことができます。
また、注意事項が1つ。
クライアントアクセスルールの IP アドレス制限は、中間層アプリケーション、平たく言えば Outlook for iOS や Outlook for Android など、クライアントからの接続を中継するアプリケーションに関しては機能しません。
まあ、そもそも何処でも使えるモバイル環境に安全に、キャッシュを残さずに利用できるようにという思想の物ですので、社内だけで利用できてもあまり意味は無いですよね。どうしてもクライアントアクセスルールで塞ぎたければプロトコル(REST)ごと塞ぐという感じになるかと思います。